古文の読解が難しい原因は、単語や文法以外にもある?「大学入試レベルの古文の問題を解くために必要なものは何ですか?」と聞かれたら、みなさんは何と答えますか? 「単語の暗記をする」「文法の勉強をする」と答える人が多いのではないでしょうか。もちろんこの2つは古文の読解力をつける上で不可欠です。単語の意味が分からなければ古文は読めません。また、古典文法も、文の意味をつかむためには必須の知識です。当然ながら、入試問題に対応するためには単語や文法の勉強はしっかりしなればなりません。しかし、古文の読解においては、もうひとつ重要な能力があります。 意外と大切な、時代背景や前提知識古文の入試問題を解くときには、初めて読む文章を短時間で素早く読みこなさなければなりません。そのときに大きなヒントになるのは、文章が書かれた当時の時代背景や、登場人物、舞台となっている場所などに関する前提知識です。特にこうした力は、センター試験で頻出の問題形式である『擬古物語』の読解において威力を発揮します。特に、男女の恋愛に関する文章では、当時の男性と女性がどのように出会い、関係を持っていくのかについて知っているのと知らないのとでは大違いです。そこで、平安時代の貴族の恋愛事情についてみていくことにしましょう。 平安時代の恋愛は『のぞき見』から始まった?平安時代の貴族の女性は『箱入り娘』で、ほとんど家から出ることがありません。男性にとっては、そもそも女性と出会うこと自体が至難の業なのです。こうした状況で男女が出会い、恋愛関係になるにあたっては、たいてい偶然の助けが必要です。『源氏物語』の『若紫』の段では、病気の治療のためたまたま京都の北山を訪れた光源氏が、美しい娘がいるという情報をもとに1軒の屋敷をのぞき見ます。これが後に源氏の最愛の女性となる紫の上との関係の始まりですが、このような『のぞき見』は『垣間見(かいまみ)』といわれ、平安時代の貴族の恋愛物語においては非常によくある展開のひとつです。 結婚には身分も重要だった!?こうしたきっかけを経て男女が出会い、恋に落ちたとしても、結婚に至るまでには乗り越えなければならないハードルがあります。それが『身分の差』です。貴族の結婚においては、本人たちの意志とは別に、両家の親の身分が問題になります。いくら本人同士が好き合っていても、両家の身分がつり合わなければ結婚はできません。女性の身分が低い場合、女性は正式な結婚ができず、男が通ってくるのを待つだけになったり、あるいは自ら身を引いたりします。逆に、男性の身分が低い場合もあります。この場合には、『伊勢物語』にある『芥川』の話のように男性が女性を連れて駆け落ちする、あるいは女性の親によって関係が引き裂かれるといったストーリーがよくみられます。ほかにも恋愛にまつわるエピソードは数知れずありますが、このような平安貴族の恋愛事情を知っておくと、初見の物語でも読みやすくなり、読解の時間短縮につながります。さらに深く知りたい方は、学校で購入する『国語便覧』などを読むと知識が深まるので、ぜひ読んでみてください!