222(コラム)

「デジタル教科書」の中間まとめ案が発表! 今後の課題や問題点を解説

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2021年2月の有識者会議でおおむね了承

「デジタル化により学習の効率が上がる」などの肯定的意見もある一方、「視力低下につながる」といったネガティブな反応も出ている「デジタル教科書」。

主に小中学校でのデジタル教科書の本格導入に向け文部科学省の有識者会議が2021年2月22日に開かれ、導入を前提に5つの導入案を盛り込んだ中間まとめ案を了承する結果となりました。

 

気になる導入時期は?

デジタル教科書に関する議論は、2009年頃から政府内で始まりました。2019年の学校法改正により、デジタル教科書が教育現場で正式に活用可能になったことから、議論が加速している状況です。

 

今回の中間まとめ案によると、来年度から全国規模で実証事業を実施し、その状況を見ながら、令和6年度の本格導入に向けて具体的な導入方法を検討していくこととなりました。

 

 

5つの導入案

デジタル教科書に関するさまざまな議論がなされる中、中間まとめ案では本格導入に向けて次の5案を提示しました。

 

(1)教科書を全てデジタル教科書に置き換える

(2)デジタル教科書と従来の教科書を併用する

(3)一部の学年あるいは教科において、デジタル教科書を導入する

(4)学校設置者ごとに、該当年度で個別に選択できるようにする

(5)全面的にデジタル教科書をメインとしつつ、必要に応じて従来の教科書も使用する

 

 

デジタル教科書のメリットとは?

中間まとめ案ではデジタル教科書を導入する意義を次のように説明しています。

社会のデジタル化やオンライン化が急速に進む中で、ICT(情報通信技術)を自在に使いこなす能力は必須であり、加えて「個別最適な学び」と「協働的な学び」を充実し、全ての子ども達の可能性を引き出す教育の実現にデジタル教科書は不可欠だということです。

 

またデジタル教科書の導入は、大きなメリットも秘めています。メリットの一例としては、以下のような点が挙げられます。

 

(1)画面に直接メモを書き込んだり書き直したりできるため、試行錯誤が容易

(2)音声機能により、読み書きが困難な子どもでも学びやすい

(3)動画や音声を活用することで学習の理解が深まる

(4)紙の教科書よりも軽くなるので登校・下校時の荷物が軽くなる

(5)グループ学習で書き込んだ内容を生徒間で見せ合い、対話的な学びにつなげることができる

 

 

有識者からは根強い反対意見も

一方、デジタル教科書の本格導入に対して、警笛を鳴らす有識者も少なくありません。

例えば「デジタル教科書は情報集めには有効だが、浅い理解にとどまり記憶に残りにくい」「難しい文章や複雑な課題を理解するには、紙に手書きする作業が欠かせない」といった意見があります。

 

実際に紙とデジタルの教科書を併用して授業を行っている中学校では、ノートを取る時間が少なくなり、理解が深まらない傾向が見られたようです。

デジタル教科書を先行導入した自治体においても、全国学力テストや高校入試などで良好な結果が出たという、統計上の裏付けは認められてないということです。

 

また、多額の予算を投入した後に「効果がなかった」となっては取り返しがつきません。海外の先行事例を慎重に分析して進めるべきであるといった意見や、デジタル教科書の効果や悪影響について第三者機関の調査や分析も取り入れつつ科学的な検証をすべきなど、政府の進め方に懸念を示す意見も出ています。

 

 

今後の課題

中間まとめ案ではデジタル教科書導入に際してクリアすべき課題を挙げています。

視力や睡眠など健康面に不安がある点や、思考力醸成など学習効果に不安が残る点、購入費の負担が発生する点、教員側の負担の増大、教員の習熟度により授業内容に格差が出る点、通信環境がないと利用できない点などが一例です。

 

デジタル教科書の本格導入に際しては、科学的な検証を含めてあらゆる角度から分析し、議論を深め、

さまざまな課題をクリアしつつ慎重に進めていくことが求められます。

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