222(コラム)

ノイズ(雑音)が持つ学習効果に迫る

c-20121116

一般的な考え方として、「ノイズ(雑音)」は集中力を低下させる原因として知られています。特に学習を対象とした場合は、集中力をはじめ、注意力をそらしてしまう可能性があると考えられていました。つまり、ノイズは学習や集中力を要する作業などの妨げにしかならないと言われてきたのです。  しかし、それは万人に言えることではないようです。人によってはノイズが集中に役立つこともあり、学習効率を高めてくれることが明らかになっています。ストックホルム大学の研究者らが行った実験では、普段から注意力が散漫な子どもたちを対象にホワイトノイズ(不規則なノイズ)を教室に流すように試みたところ、教師の話を集中して聞くことができるようになり、学習効果も向上したようです。しかし、この実験で明らかになったのは、はじめから注意力が散漫な子どもたちを改善できたことだけではありませんでした。  普段から注意力が高い子どもたちにとっては、ホワイトノイズが逆効果にしかならなかったのです。むしろ、学習の妨げになってしまい、学習効果が低下してしまうことが明らかになりました。ただし、注意力が散漫な子どもが多い教室を担当する教師からすれば、ホワイトノイズを教育の現場で応用することができる可能性もあるのです。これによって、注意力散漫な子どもたちによる学級崩壊を防ぐ手段になるかもしれないと期待されています。  では、ノイズに学習効果があるのはなぜなのでしょう。ノイズ自体は基本的に集中の妨げとなると考えられますが、タスクに関係のない適度なノイズのある環境にしたほうが、そのタスクのパフォーマンスを向上させることができるようです。このノイズの効果は、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の子どもを対象にした実験でも有効に作用したことが報告されているため、ノイズは決して人間にとって邪魔な存在ではないことがわかります。  最近の研究では、ドーパミンに関連している内部ノイズと確率共鳴の理論(人の耳が知覚できない小さい音量のシグナルにホワイトノイズを重ねることのよって、シグナルが強まって聞こえる原理)をベースにした計算モデルも明らかになりました。この計算からすると、ドーパミン受容体を遮断をすることで、ドーパミンの低下した状態の人は、適度なノイズが学習などの集中力や注意力が必要とされる作業におけるパフォーマンスの向上に貢献するという仮説が立てられています。  また、とある学校において、それぞれの生徒の「ノイズの有無による成績の差」と、「教師により評価された注意力」(7段階評価のスコア)は相関したところ、スコアが高い(注意力がない)生徒ほどノイズによるポジティヴな効果が大きいことが明らかになりました。  同時にスコアが低い(注意力がある)生徒ほどノイズによるネガティヴな効果が大きかったこともわかったようです。つまり、普段から注意力がある生徒は、ノイズは天敵でしかなく、これによって集中を乱されやすいことが明らかになったのです。  注意力があるかどうかを自分で分析することができれば、ホワイトノイズを有効活用することができるかもしれません。とは言え、普段の生活の中で雑音があったほうが心地いいと思う人と、そうでない人がいるので、ある程度は自分自身がどちらのタイプなのかが区別できると思います。  学習におけるパフォーマンスを向上させたい方は、ホワイトノイズを試してみもいいかもしれません。もちろん、結果はどうなるかわかりませんが、これによって学習効率が高まるなら、試してみる価値はあると思います。

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